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角田光代「八日目の蝉」

今日は読書話です。
友人のオススメで角田光代「八日目の蝉」を読みました。
角田光代といえば、直木賞受賞作「対岸の彼女」はとても好きな作品。
女性心理を描かせたらピカイチ。
胸の奥底にしまってあるコンプレックスや傷を見せられているような気がして、
でも不思議と無理矢理引きずり出される感じではなく、
自然に登場人物に共感できます。きっと、どこか似ているからなのでしょうね。
切なくて心を揺さぶられます。

この、「八日目の蝉」はサスペンスという触れ込みでしたが、
あまりサスペンス色は感じませんでした。でも、ストーリー展開のスピード感がすごいです。
少しずつ読むつもりが、夜更かしして一気読み。
以下、ネタバレあり。ご注意下さい。










「八日目の蝉」
地上に出て七日で死んでしまう蝉。でも、もし八日目まで生き残った蝉がいたら…
他の蝉とは違う、悲しみや切なさを背負わなくてはいけない。
見なくていいものを見てしまうかもしれない。
でも、他の蝉が見られないものを見られるかもしれない。
そんな深いテーマに包まれた一冊でした。


希和子が「絶対にこの子は守る」という強い意志を持って、抱きかかえていく導入から、
引き込まれてしまって、ずっとドキドキしながら読み進めました。
私は今、母親という役割を持っています。
だから、希和子の誘拐は許せない犯罪であるはずなのに、逃避行をずっと応援して前半を読みました。
秋山夫妻が赤ちゃん置き去りにして出かけるような親だからかな。
絶対、赤ちゃんをひとり置いて外出はしちゃいけません!
希和子の方が母親らしく感じました。自分が子どもを持てなかった悲しみも伝わってきました。
だから、共感してしまうのかもしれません。
エンゼルさんの施設も含め、女性がたくさん登場するのですが、角田さんは女性の描写が本当に上手いです。
そして、エンゼルさんの設定もうまい。「がらんどう」の女たち。
心に空虚がある人は、こういう自己啓発的なカルト集団(宗教含む)にはまりやすいです。
エンジェルホームを出て、小豆島での静かで穏やかな暮らし。
このまま終わるはずがないのに、小さな幸せが壊れないよう祈りながらページをめくりました。
後半は19歳の恵理菜視点になって展開していきます。
彼女の痛み…本来の自分の家族とぎくしゃくし、他人から好奇の目で見られ、
そんなことになる原因を作った「あの女」を憎んでいる。
それなのに、「あの女」と同じ不倫をしている。
「あの女」に似ている気がして、ぞっとする。
自分が悪いわけではないのに、自分のせいであるような気がして、つらくなる。
まさに、親達の因果のとばっちりが恵理菜にいってしまった。彼女は何も悪くないのに…
恵理菜の苦しみがよく表現されていたと思います。
また、千草や真理菜の痛みも切なくて、じんじんしながら読みました。
惜しいのは、もう少し秋山夫妻の苦悩に踏み込んでいれば、さらに深みが増したように思います。
どうも、2人とも親であるのに、逃げているようにしか見えなくて。
特に母親の方は、自分が鍵もかけずに置き去りにした挙句に行方不明になったわけだから
自分を責めて責めて、苦しんでいると思うのですよね。
だから、戻ってきた恵理菜が島の言葉でしゃべったり、自分と心が通じなかったりすることに対しても
感情的になった後で、必ず深い後悔が襲ってくるのではないかと思うのです。
私は何となく感じるところはあったのですが、男性には伝わりにくいだろうなと思いました。
その辺りの「揺れ」がもう少し見えると良かったかな。
恵理菜がお腹の命に「きれいなものをたくさん、見せてあげる義務がある」と言ったところはぐっと来ました。
それで19歳のシングルマザーになる決意につながるのか?と言われれば、非現実的かもしれませんが、
赤ちゃんは自分自身ではなく、だから命を奪ってはいけない、という気付きとしてはアリだと思いました。
友人はラストは号泣だったそうですが、私は号泣はできなかったです。
じわっとくるセリフはたくさんあったのですが、号泣につながらなかったのは、
多分、希和子が薫(恵理菜)に気付かなかったからです。
母親なら、自分の子がどんなに変わってても判ると思うんだけど…
例え自分が産んでなくても、3年半一緒に暮らしたのだし。
別れて15年経っていたとしても、母親の勘で分かりそうなものです。
確信を持たなくていいから、希和子だけは「もしかして」と思って終わって欲しかったです、私としては。
あと、恵理菜父と岸田さん、2人の男性キャラが2人してダメンズ。ちょっとこれは不満。
恵理菜父はあれでもいいので(事件の原因を作ったともいえるキャラだし)、
岸田さんにはもう少し男を見せて欲しいです。
携帯の番号変えられたくらいで、縁切れるような想いなのか…と萎えました。
まあ、恵理菜が「面倒くさいことから逃げる人だから好きになった」とは言ってますけどね。
でも、全体的に本当によくまとまっていて、ラストは希和子と恵理菜、
2人のカタルシスもびんびん伝わりました。
希和子が逮捕される時に叫んでいた言葉が最後に分かりますが…
「その子はまだ朝食を食べていないの」
立派な母親じゃないですか(T-T)
ここは、本当にずっしり来ましたよ。恵理菜も思い出してくれて良かった。

母子手帳がないと子ども育てられないぞー、とか、なぜ不倫なのに避妊をしないんだ!
などの突っ込みどころはあるものの、物語の吸引力はすごかったです。
長くなりましたが、すごく良い話だったことは間違いないです。

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