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性的暴言事件・続報

8/8に書いた「特養入居者に性的暴言」の記事に、アクセスが多数ありまして
改めて、この事件の波紋が大きく広がっていることを認識しました。
そこで、先日の記事についての補足も含め、この事件の続報について書きたいと思います。

性的暴言の特養「さくら苑」、処分見直しで施設長解任

東京都東大和市の特別養護老人ホーム「さくら苑」で、男性職員が女性入所者(90)に
性的暴言を浴びせた問題で、さくら苑を運営する社会福祉法人「多摩大和園」は9日、
当初の処分内容を見直し、玉川桜子苑長を同日付で解任して本部付とし、
男性職員2人も最終的な処分決定まで自宅待機とした。

問題発覚後、同法人は玉川苑長らを減給に、職員を5~7日の出勤停止処分としていたが、
批判が高まり処分を見直したとみられる。

今後、苑長を兼任する足利正哲常務理事は男性職員2人について
「介護の現場には戻さないだろう」とした。

また、第三者で作る人権侵害調査委員会と内部の改革委員会を新たに設置し
再発防止を徹底するとした。
(読売新聞) - 2006年8月9日20時48分

私自身も書きましたが、この事件を起こした職員に対する処分はとても甘いものでした。
懲戒免職になってもおかしくないことを、この2人はしているのです。
それなのに、出勤停止ということは、また介護の現場に復帰するのか?
誰もが持った疑問だと思います。
この対応からも、この施設を運営している法人の体質が分かってしまうと思います。
今回も、「介護の現場には戻さないだろう」と言ってはいますが、解雇はしないわけですね…。
介護の仕事に関わっていた私としては、わざわざ処分を見直してもそれか、と半ば呆れています。

その一方で、私が先日の記事で歯切れの悪い口調だったことについて。
私自身、この事件は決してあってはいけない事件だったと思いますし、ショックでした。
「許せない」と怒りを覚えている記事のブログも、多数見かけました。
私も彼らを許せません。被害に遭った利用者さん自身もお気の毒ですし、
真面目に介護の仕事を頑張っている人にも、大変失礼で迷惑なことだと思います。
ただ、何故単純にこの職員達を批判しなかったのか?と言えば、
現場の過酷な労働を考えると、ギリギリ危ないところにいるような気がする…
と思うフシはあったからです。
もちろん、この事件の問題職員のように、もともとの「意識」が低くて、
利用者さんを人として扱っていないことは、もう問題外です。
だから、現場でこういう事件が頻発している、とは思いません。あってはいけないのですから。
しかし、人手が足りないことによって、口調がきつくなってしまったり、
丁寧な対応ができなくなってしまったりする「瞬間」は、無限にあるのです…。
そこから、徐々にこういう事件につながってしまうとしたら。
それが怖いと思いましたし、温床かもしれない、それならどこにもあり得る、
と思ったからだったのです。

きっと今回の事件を受けて、行政や世間は、「介護という尊い仕事をしているのだから、
きちんとした対応を」と望み、締め付けはきつくなると考えられます。
意識の問題だけだったら、確かにどんなに忙しくても、すぐに気をつけられるとは思います。
でも、忘れて欲しくないのは、介護をしているスタッフはロボットではなく「人」なのです。
この問題が明るみに出たことで、職員の資質を向上させていくようにすることは大事です。
しかし、同時に、介護の現場の労働というものがどういうものなのか、
それも見直してみて欲しいと思うのです。

私の経験を少しだけ、書いておきましょう。
一緒に働いていた職員で、夜勤をやっていない人から
「夜ってナースコールがなければ、寝ていられるんでしょう?」と言われて
唖然としたことがあります。そんなこと、あるわけない。夜勤は16時間勤務ですが、
仮眠1時間以外は寝られません。利用者さん達が寝ていても、することはたくさんあります。
例えばケアプラン作成等の事務仕事、行事の準備、介護の記録など。
夜だからこそ、巡回の合間にそういう仕事ができるので、せっせと片付けます。
しかし、ショートステイ利用者さんの状況によっては、「仮眠以外5分と座れなかった」ことも。
実はその日の夜勤明け、仕事が終わった後、いつのまにか利用者さんをお部屋に送って
そのままその方の足元で、眠すぎて5分ほど意識を失ったことがあります。
(利用者さんには体重かけてませんよ!そして起きたら「疲れてたのね」って苦笑されました)
朝7時に早番が来るまで、1人で20人の対応をしなくてはなりません。
これは施設の構造上の問題もありますが、夜勤は本当に過酷でした。
でも、「一緒に働いている職員すら」そういう勤務内容をよく知らない…。
これは、世間の人達が分からなくても当然かな、と思ってしまいました。

今回の事件を受けて、現場も当然揺れています。
しかし、毎日の介護だけで手一杯で、このことについての職員同士の話し合いも
満足に行えない現状のようです。
私の元職場は、もう1年半近く欠員状態が続いていますが、
どこの施設も人手不足は深刻な問題です。
「人が多ければいい介護ができる」と、私は思いません。
なぜなら、今回の事件を起こしたような、根本的に間違った職員がいたとしたら
頭数だけ多くても、いい影響はないからです。
でも、どんなに素晴らしい職員だったとしても、物理的に体はひとつしかないわけですから
定数に満たないくらいの勤務体制が、ずっと続いていたら…。
それで、周りの求めるものだけが高い、というのは、つらすぎます。

正直、真面目で一生懸命、利用者さんの求める介護をしていきたい!
と希望を持って現場に入ってきた人ほど、打ちひしがれて辞めたくなるような、
介護の現場というのは、そういうところです。
私は、その中で必死に、利用者さんのことを考えつつも、自分が壊れないで仕事をできる方法、
というのを探って仕事をしてきたつもりです。
しかし、結局昨年退職という選択をしたのは、「仕事を第一に考えないとやっていけない」
と思ったことが大きいところでした。
まあ、これは私自身の考え方の問題もあると思うので、深く言及はしませんが、
ひとつだけ書いておくとすれば、「家庭より仕事を優先せざるを得ない」部分が多すぎました。

本当にこの仕事が好きな人ほど、辞めなくてはならない…
そんな状況だけは、どうにかならないのかな、と思いつつ、
私が介護の仕事に就いた頃から、ずっとそれは変わっていません…。

特養入居者に性的暴言

つい最近のニュースです。知っている方も多いのではないでしょうか。

特養入居者に性的暴言 東京・東大和

 東京都東大和市の特別養護老人ホーム「さくら苑(えん)」(入居定員80人)で、
男性職員が認知症の女性入居者に性的な虐待発言をしていたことが、
女性の家族による録音テープで明らかになった。施設側は家族に謝罪するとともに職員らを処分。
東京都は、虐待が繰り返されていた可能性もあるとして近く立ち入り調査する。
介護施設での高齢者への虐待は表面化しづらいため実態がわかっておらず、
具体的な証拠で裏付けられるのは珍しい。
2006年 8月 6日 (日) 03:03 朝日新聞より抜粋
 記事全文はこちらから』

このニュースを聞いた時、まず最初に思ったのは「身近でもあり得ないとは言えない」ということ。
今回報じられていたような、問題のある性的暴言までいかずとも、
(この職員達は、自分達が問題発言をしている自覚もあったわけですし)
職員が悪い意味での慣れから、冗談で済むか問題になるか、
ギリギリの発言をしている可能性は、どこの施設にもあるのではないか?と思いました。
もちろん、それは良くないことなので、ことある毎に気を引き締める必要があり、
容認するのは間違っています。しかし、このニュースのように管理職のいない夜勤中だと
つい、出てしまっている可能性はあるだろう、と懸念されます。

認知症の利用者さんに対しては、平易な言葉遣いをした方が、意志の疎通が図れることもあります。
しかし、それは「子ども扱いしてよい」「年長者と思わなくてよい」ということではありません。
あくまでも、その人にとって「分かりやすく」話をする、というだけのことで、
人としての尊厳を傷つけるような行動は取ってはいけないと思います。
おそらく、この職員達は、この利用者さんが反応を示すから、という理由だけで
こういう声かけをしてしまっていたのでしょう。それはプロの介護者としては、認識が甘いです。

ただ、私自身、働いていた頃に何度も思ったことですが、言葉遣いについては
「気をつけましょう」と言っても、実際に職員全員の意識をある程度統一すること自体、
難しいな、と感じることがありました。
以前、HPでも「美しい言葉遣い」について意見を述べたことがありますが、
「敬語」にこだわるのではなく、耳ざわりの良い言葉で話せば良い、と思うのです。
しかし、これだけ個人の価値観や意識が違ってしまう問題だと、サービスの統一を図るには
「敬語で、お客様として接しましょう」と言った方が、分かりやすいかな、とも最近思います。

このニュースで、もうひとつ気になった点はここです。
(ご家族が)オムツに排泄(はいせつ)物がたまっていたり、
手にアザが残っていたりすることが重なり、介護内容に不審を抱いた。

オムツに排泄物、に関しては、どれくらいの頻度で発見したのかが分からないので、
施設で働いていた者である私は、「もしかしたらタイミングが悪かったのかなあ…」と思います。
しかし、「手にアザが」の部分は、明らかに問題です。
確かに高齢者は内出血しやすいので、気をつけていても、できてしまうことはあるでしょう。
それでも、ご家族が不信感を持つほどの回数だったとすれば、これは施設の職員間で
安全に介護するということが、浸透していない、と思われてしまっても仕方ないです。
また、改善していなかったのだとすれば、プロとしてなってない、とみなされます。
「アザになってしまう」のは当たり前ではなく、どうやって防ぐかは考えなくてはなりません。
その努力をしていれば、すぐには伝わらなくても、ここまでご家族の不信感が募ることは
なかったのではないか?と思います。

しかし、最初にも書きましたが、このことは「ここまでひどいものはあり得ないけれど、
もしかしたら、温床はあるのかもしれない」と思うだけに
介護に関わる仕事をしたことがある私としては、身につまされ、ゾッとする事件でした。
それにしても、職員の処分が「職員本人が出勤停止7日間、後輩職員を同5日間」
というのは甘すぎると思います。もう介護の仕事はして欲しくないですね。
言葉遣いの問題は、決して軽いものではないと思うからです。
この機会に、介護の仕事に携わっている人には、ぜひわが身を振り返って欲しいです。
今は仕事をしていない私も、過去を顧みて、反省すべき点があるかもしれない、と思っています。
介護はプライバシーに関わる仕事。気を抜いてはいけない。
ご本人やご家族が傷つくようなことを、「そんなつもりではなく」言ってしまっていることがないか?
常に自分に問いかける必要がありそうです。

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